センター概要


東京大学医学部では、1990年代後半以降、医学教育改革の動きが活発化し、医学教育専任の教員ポストを作ることを目指し、概算要求事項に掲げました。ちょうど、当時の文部省大臣官房国際課国際協力政策室が、国際教育協力を推進する分野別センターを計画しており、保健医療領域の部署が東京大学に設置されました。よって、わが国の医学教育改革だけでなく、文部省が推進する国際教育協力を保健医療分野で行うというミッションも帯びておりました。2000年4月の創立より13年が経過しましたが、その目標はかなり達成できてきたのではないかと感じます。

当初、東京大学の全学センターの位置づけでしたが、設立時の経緯から医学部の教育にも様々な関わりをしてきました。特に、外国人客員教授の先生方は、センターおよび医学部の教育改革の牽引役としてその力をいかんなく発揮したと思います。東京大学医学部のミッションを制定し、カリキュラムの骨格を固めていく過程では、当センターはFDを主体的に実施するなどの貢献をしてきました。その後、クリニカルクラークシップの評価、臨床診断学実習での医療面接や身体診察教育、 プロフェッショナリズムに関するチュートリアル、共用試験(CBT+OSCE)、東京医科歯科大とのコンソーシアムでの模擬患者育成といった活動が加わりました。00年代の10年間は、 わが国でモデル・コア・カリキュラムや共用試験を中心とした卒前教育の改革が急速に進んでいった時期でもあり、東京大学医学部もある程度は流れを同じくしたと言えなくもありません。

全国的な医学教育の牽引という観点では、日本医学教育学会や医療系大学間共用試験実施評価機構を通じた個々の教員の活動も注目されます。日本医学教育学会では、2005年7月に当センターが大会を主幹し、当時の加我センター長が大会長、北村主任教授が運営委員長の役割を果たしました。また、大会での学会発表も数多くなされると共に、教員が役員や各種委員会の委員となり、 学会において当センターのプレゼンスが十二分に示されたと感じています。 医療系大学間共用試験実施評価機構は、CBTやOSCEの運営や継続的な改善を図っていますが、 ここでも当センターの教員らが委員などを歴任されていることは喜ばしい限りです。

知見の普及を図り、国家レベルで医学教育の変革を働きかけていくという観点で、国際協力活動の幅が拡がりつつあるのは非常に特筆すべき点であると考えております。保健医療分野の人材育成は、近年国際連合や国際保健機関において重視されつつある分野でもあり、元々の当センターのミッションにも合致した活動と言えるでしょう。これまでのところ、国際協力機構(JICA)を中心とした二国間協力の枠組みで、日本のODAプロジェクトに関与してきています。アフガニスタン医学教育プロジェクトは、事前調査から3年間のプロジェクトの実施、その後のフォローアップ協力と長期間に及ぶ取り組みとなっており、国全体の医療人材育成に大きな影響を及ぼしています。ラオス国セタティラート大学病院医学教育研究機能強化プロジェクトは、初の業務実施契約型であり、当センターの負担は大きくなりましたが、プロジェクトによって継続的に委託研究費を取得するなど、センターの運営にも変化を生んでいます。また、インドネシアでは医学部整備への協力や調査、モンゴルでは保健セクターの調査などにも参画しています。

センターのオフィスは、2000年開設当時は医学部総合中央館(主に医学図書館の建物)の2階の東端辺りのみでした。2004年には国際地域保健学教室が3号館に移動し、セミナー室などいくつかの部屋を加えました。また、2008年に耐震補強及び改装工事を終えた時点で、以前の医学図書館史料室スペースを更に加えるに至りました。
2007年1月には、自治医大学長の高久史麿先生らを迎えて、第1回外部評価および自己点検評価を実施しました。そこで、学内では医学部のアドバイザー的立場であり、自立発展をサポートする方向での活動が望ましいこと、医療人材育成における国際協力は主たるミッションとして今後共一層の発展が期待されることの指摘がありました。今後、当センターが向かうべき方向を端的に示唆する貴重な提言であると受け止めています。

2013年4月には、東京大学大学院医学系研究科医学教育国際研究センターに改組されました。これは、2012年3月の第2回外部評価および自己点検評価の結果を受け、医学部側の意向にも沿った形の大きな改革でした。その結果、医学系研究科の協力講座となるといった変化が生じました。
今後も、日本のそして世界の医学教育分野の未来を作っていく重要な役割を担っていくことが、当センターには期待されていると考えます。これからも、継続して発展していく必要がありますが、このような形で走り続けられるのも、周囲の皆さまのご尽力あってのことと思います。今後とも、関係の皆様方には、ご指導、ご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

東京大学大学院医学系研究科
医学教育国際研究センター
センター長 山岨達也